COLUMN コラム
Soraie一級建築士コラム

小野 貴士
一級建築士
床暖房の電気代は高い?2019年のHEMS実測と太陽光発電を検証
2020.01.6
Soraie一級建築士コラム|Vol.1
床暖房・太陽光検証
こんにちは。空間デザイン住宅Soraieの一級建築士、小野です。
床暖房のある家をご見学いただくと、
「暖かくて気持ちがいいですね。でも、毎月の電気代はどのくらいかかるのでしょうか?」
と尋ねられることがあります。
太陽光発電についても、実際にどのくらい発電し、家計の負担を減らせるのかは、気になるところだと思います。
設備のカタログやシミュレーションも参考になりますが、私自身は、実際に暮らしている家ではどうだったのかを見ることも大切にしています。
今回は、Soraieで建築いただいたお施主様からご提供いただいたHEMSデータをもとに、床暖房の費用と太陽光発電の効果について考えてみます。

掲載データについて
この記事は、2019年1月〜12月の実測データと、当時の条件による比較・試算を紹介しています。
電気料金、設備価格、売電条件などは2026年現在とは異なります。掲載する金額や投資回収年数は、現在の費用の目安ではなく、当時の一事例としてご覧ください。
目次
今回検証するのは、約47坪・1階全面に温水式床暖房のある家
今回データをご提供いただいたのは、少し大きめの約47坪のお家です。
| 項目 | 今回の住宅の条件 |
|---|---|
| 床面積 | 約47坪 |
| 太陽光発電 | 6.16kW |
| 床暖房 | 1階全面に温水式床暖房を設置 |
| 冬の使い方 | お施主様のお話では、ほとんどつけたままで使用 |
| 住宅性能 | Soraieで建築した高気密・高断熱住宅 |
| データの対象期間 | 2019年1月〜12月 |
床暖房を短時間だけ使うのではなく、冬の間はしっかり使って暮らしていた住宅です。
なお、今回扱うのは、この住宅に設置した温水式床暖房の事例です。床暖房すべてに、同じ費用が当てはまるという意味ではありません。
HEMSで「使った電気」と「つくった電気」を確認する
HEMSは、家庭で使うエネルギーを見える化し、管理するための仕組みです。対応する設備と組み合わせることで、電気の使用量などを確認できます。
今回の資料では、家全体の消費電力量、太陽光発電の発電量、売買した電力量などを月ごとに整理しています。
ここで分けて見たいのが、電力量の実測値と、その電力量をもとにした金額の比較・試算です。
「何kWh使ったか」と「何円かかったか」は、同じものではありません。金額を見るときには、電気を買う単価や売る単価など、計算の条件も一緒に確認する必要があります。
こちらが、お施主様からいただいた2019年のHEMSデータと、当時の比較・試算をまとめた資料です。

掲載資料:2019年のHEMS実測データと当時の比較・試算。金額は当時の条件によるもので、2026年現在の電気料金を示すものではありません。

床暖房の費用は?2019年の比較で分かったこと
データを見ると、この住宅では冬に電気の使用量が増えていました。
ただし、家全体の電気使用量には、床暖房以外の設備や家電なども含まれます。家全体の数字を、そのまま床暖房の使用量と考えることはできません。
そこで当時は、約37坪の、床暖房を使用せずエアコンで暖房している別のお住まいと比較しました。
当時の記事では、その比較から、冬場の費用負担を月あたり約5,000〜6,000円程度多く見ておく必要があると読み取っていました。
ただ、ここは数字だけが独り歩きしないようにお伝えしておきたいところです。
この差額は、床暖房だけを個別に測った電気代ではありません。
比較した住宅は、約47坪と約37坪で広さが異なります。別のご家庭ですから、暮らし方まで条件をそろえた比較でもありません。
そのため、この資料だけで、費用差のすべてを床暖房によるものと断定することはできません。
「床暖房を入れると、今でも必ず毎月5,000〜6,000円高くなる」という説明ではなく、2019年当時、実際のお住まいを比較しながら費用を考えた一例として見ていただければと思います。

費用だけでは決められない、床暖房の快適さ
床暖房には、床から伝わる熱や、暖まった床面からの輻射熱によって、足元から暖かさを感じられる特徴があります。温風を直接体に受ける暖房とは、暖かさの感じ方も異なります。
家の中がほんのり暖かく、足元も冷たくない。
この心地よさに価値を感じる方は、いらっしゃると思います。
一方で、採用を考えるときには、導入費用だけでなく、使い続けるための費用や、将来のメンテナンスも含めて検討したいところです。
だから私は、
「床暖房は快適だから、付けましょう」
とも、
「費用がかかるから、やめましょう」
とも、一律には考えていません。
その暖かさを、ご家族がどのくらい大切にしたいか。そこに、どこまで予算をかけるか。
床暖房のメリットとデメリットを、両方知ったうえで選んでいただくことが大切だと思っています。

太陽光発電は、2019年の年間消費電力量を上回りました
この住宅には、6.16kWの太陽光発電を設置しています。
2019年のデータでは、年間の太陽光発電量が、家全体の年間消費電力量を上回る結果になりました。
また、当時の記事では、事前の発電シミュレーションを上回る発電量だったことも紹介しています。
1階全面の床暖房を冬に長時間使っていた住宅でも、年間では使った電力量以上の電気を発電できた。
これは、この家の省エネ性と太陽光発電の働きを考えるうえで、興味深い結果でした。
ただし、「年間の発電量が消費量を上回った」と「電気代がゼロになった」は、別の話です。
太陽光が発電する時間と、家で電気を使う時間は、必ずしも一致しません。昼間の余った電気を売る一方で、夜間などに電気を買うこともあります。年間の電力量だけで、電気料金まで判断することはできません。
また、制度上のZEHは、断熱性能や所定の一次エネルギー消費量の計算などによって確認するものです。この実測データの大小関係だけで、ZEHの要件を満たすと判定するものではありません。
今回は、「2019年のこの住宅では、年間消費電力量を上回る発電量が得られた」という実績としてお伝えしています。

太陽光の「約7.5年で回収」は、当時の試算です
当時の記事では、この住宅の発電実績や設備費用などをもとに、太陽光発電の投資回収を約7.5年と見込んでいました。
ここでいう回収年数は、当時の条件で計算した見込みです。
実際に7.5年間使い続けて、費用を回収し終えたことを確認した数字ではありません。
また、2019年当時と2026年現在では、設備価格や電気料金、売電制度などの条件が異なります。住宅用太陽光の買取価格の仕組みも変わっているため、当時の回収年数を、これから設置する住宅へそのまま当てはめることはできません。
これから太陽光発電を検討する場合には、その時点の条件で考え直す必要があります。
設置するために、いくらかかるのか。
その屋根の向きや大きさで、どのくらい発電できそうか。
発電した電気のうち、どれだけを自宅で使い、どれだけを売るのか。
そして、将来の点検や機器交換に、どのような費用を見込むのか。
「何年で元が取れます」という答えだけでなく、その計算がどんな条件で成り立っているのか。
そこまで確認していただきたいと思っています。

高性能な家でも、設備の使い方まで一緒に考える
高気密・高断熱住宅だからといって、電気を使わずに暮らせるわけではありません。
どのくらいの広さを暖めたいのか。
どの時間帯に、どのくらい暖かくして過ごしたいのか。
どのような設備を使いたいのか。
家の性能とあわせて、ご家族の暮らし方も考えていく必要があります。
私たちが目指したいのは、電気を使わないこと自体ではなく、必要なエネルギーをできるだけ抑えながら、快適に暮らせる家です。
そのために、建物の性能へ予算をかけることも、設備の心地よさを選ぶこともあります。
手の届く予算の中で、どこにお金をかけると日々の暮らしが良くなるのか。
そこを一緒に考えることが、家をつくる側の仕事だと思っています。

数字だけで決めず、数字をごまかさずに考える
今回お伝えしたのは、2019年の一つのお住まいの記録です。
今の家づくりに、そのまま使える金額ではありません。
ただ、実際の暮らしの数字を見て、設備の良いところと、費用がかかるところの両方を考える姿勢は、今も変わりません。
床暖房なら、快適さと費用のバランス。
太陽光発電なら、発電できる量と、設置・維持にかかる費用。
設備を付けることを先に決めるのではなく、そのご家族の暮らしに合っているかを考える。
Soraieは、営業を置かず、建築士がお客様と直接お話ししながら家づくりを進めています。
だからこそ、設備の魅力をお伝えするだけでなく、迷うところや気をつけたいところも含めてお話ししたいと思っています。
数字だけで決めず、数字をごまかさずに考える。
今回のデータが、ご自身の家づくりを考えるきっかけになればうれしいです。
空間デザイン住宅Soraie
一級建築士 小野 貴士
参考情報
| データの対象期間 | 2019年1月〜12月 |
| 元記事の公開日 | 2020年1月6日 |
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「太陽光発電を載せるべきか迷っている」
「住宅性能と設備に、どう予算を配分すればよいか分からない」
そんなところから、ご相談ください。
過去の事例も参考にしながら、現在の設備や料金の条件、ご家族の暮らし方に合わせて、一緒に考えていきましょう。
売る人ではなく、家をつくる人と話す。
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