新築を建てる際には、理想的な暮らしを実現させるために、家の間取りや構造、部屋の数、日当たりのよさなど、さまざまな設計プランやデザインを考えるでしょう。しかし、快適な生活を送るためには、家の性能の高さが暮らしやすさを決定づける、ひとつの大きな分かれ目となります。
本記事では、家の性能にはどんなものがあるのか、性能を判断する数値について、家の性能を左右するポイントを詳しく紹介します。
目次
家の性能を構成する要素
家の性能には、地震が発生した際の耐震性、物理的・化学的な影響に対する耐久性、熱伝導を妨げる断熱性があります。そのほかにも気密性、防火性、防犯性、省エネ性などがあり、これらの性能に優れた家を、高性能住宅と呼んでいます。性能が整った住宅にすることで、安心かつ快適な暮らしが実現できます。
それでは、家を建てる際に考えるべき、家の性能について詳しく紹介します。
耐震性
耐震性とは、地震が発生したときの揺れに耐えられる度合いのことをいいます。地震の多い日本では非常に重要な性能で、一定以上の耐震性を備えた建物しか建設することができないと、建築基準法で定められています。
建物の強度を示す指標として、耐震等級が用いられ、数字が大きくなるにつれて耐震性も高くなります。耐震性を高めることで大きな地震の揺れにさらされても、倒壊や破損がしにくくなるのはもちろんのこと、住宅が強風や台風などの影響を受けにくくなるため安心して暮らせるでしょう。
耐久性
耐久性とは、ある材料が外部からの物理的、化学的な影響に対して、どれだけ長く抵抗できるかを示す性能を指します。耐久性が高いと、劣化スピードが緩やかで、良好な状態が長持ちさせることが可能です。また、安心して暮らせるだけでなく、メンテナンスや建て替えが少なければ修繕にかかるコストを抑えることもできます。
そのため耐久性の高い家にすることで、長く住み続けられる、資産価値を長期間維持できる、というメリットを得ることができます。
しかし耐久性を高めるには、建物の構造・間取りが重要なうえ、住んでいる人の成長にともなって変化していくライフスタイルに対応できなければ、建て替えやリフォームが必要になる場合もあります。長年暮らしていくことを考慮し、さまざまな状態に対応できる住まいを考えることが、耐久性を高めることにつながります。
断熱性
断熱性とは、熱が伝導することを妨げる性能のことをいいます。家の温度は、窓や壁を通じて外の天気や気温に大きく影響されますが、壁にしっかりとした断熱材を施したり、二重窓にしたりすることで、室内が外気の影響を受けにくくなります。
また、断熱性が高いことで、冷暖房で適温に整えた室内の空気が外へ逃げていくのも抑えられ、効率よく部屋の温度を調節することが可能です。それにより、エアコンの使用を抑えられるので、省エネルギーや光熱費の抑制にもつながります。
気密性
気密性とは建物の隙間をできるだけなくして、空気の出入りを減らすものです。断熱性能と密接な関係にあり、気密性が欠けてしまっていると、高性能な断熱性も効果を発揮することができません。
また、住宅が老朽化する大きな理由の一つの結露は、冷房で冷やされた屋内に湿気を含んだ外気が入ったり、暖房で温まった屋内の空気に冷たい外気が当たったりすることで起こります。つまり、住宅の気密性が高ければ結露の発生を抑え、建物の劣化を抑制することが可能なのです。
防火性
防火性とは、周辺の建築物から発生した火事の影響を防ぐための性能です。建築基準法施行令によって定められており、主に外壁と軒裏に防火性の高い材料を用いた構造のことをいいます。
とくに、都心部で隣の家との距離がほとんどないような場所で火災が発生すると、すぐに近隣の家に燃え移ってしまう可能性がありますが、防火性能を高めることで延焼を防ぐことができます。
防犯性
防犯性とは、人為的破壊行為による侵入手口に対する抵抗力を示すものです。日本の空き巣被害は、窓ガラスを割ったり燃やしたりすることで、そこから手を差し込み、鍵を開けて侵入する手口が多い傾向があります。
日本は世界でも安全な国といわれていますが、家の防犯性能を高めて、被害にあう確率を下げるに越したことはありません。
家の防犯性能を高めるには、防犯用の強固な窓ガラスを備えることや、サッシを二重にするなどの対策が必要になります。加えて、防犯警報装置や夜間のオートライトを設置すれば、防犯対策をさらに強化できるでしょう。
家の性能を示す数値
住宅の性能は高い方がいいとはいえ、基準や性能を示す数値がわからなければ判断することは難しいでしょう。家に関わる数値はたくさんありますが、快適に暮らせるかを判断する数値が何なのか知ることが大切です。
理解することで住宅性能を見極め、地震に強く、一年中快適でヒートショック現象が起こりにくく、腐敗やカビなどが発生しない健康的な住まいを手に入れられます。
では、性能を判断するために使われる数値をいくつか紹介します。
C値とは
C値とは相当隙間面積のことで、どれくらい家にすき間があるのかを示した数値です。1平方メートルあたりに存在する隙間面積を示す数値を指します。C値の計算方法は、住宅全体の隙間の合計面積÷延べ床面積で、気密性の高さを判断できます。
かつては省エネ法に基づき、日本の地域ごとにC値の基準がありましたが、省エネ法が改正後、高気密を定義する明確な基準はなくなりました。
しかし、C値が小さいほど隙間が少ない家であると判断することは可能です。
UA値とは
UA値とは外皮平均熱貫流率のことで、どれくらい熱が家の外に逃げやすいのかを表す数値です。住宅の内部から床や外壁、屋根、窓などを通過して外部へ逃げる熱量を、外皮全体で平均した値のことを指します。
UA値の計算方法は、各部位の熱損失量の合計÷延べ外皮面積で、0に近いほど熱が逃げにくい家となります。UA値では断熱性能を知ることができますが、基準となる数値は地域によって違いがあります。
HEAT20とは
HEAT20とは、一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会という団体の略称です。HEAT20では、より快適に暮らすために断熱性能の基準値を定め、G1・G2・G3のランクで評価しています。このランクでは、断熱水準や室内温度環境を知ることができ、省エネ住宅の指標にもなっています。
日本を8つの地域に分け、それぞれの地域に適した断熱性能の基準値を定めており、その基準は国で定められた最低基準よりもかなり厳しく設定されています。
耐震等級とは
耐震等級とは、地震に対する建物の強さを表す指標です。耐震等級は1級から3級に分けられ、数字が大きくなるにつれて耐震性も高くなり、1級は建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準となっています。そして、2級は1級の1.25倍、3級は1級の1.5倍の強さがあると定義されています。
水準となっている1級は、震度6強〜7程度の地震でも倒壊・崩壊しない、震度5程度の地震でも損傷しないという強さになっています。しかし、地震大国である日本で1級では安心できるとは言い難いため、3級を取得することをおすすめします。
家の性能を左右するポイント
家の性能について説明してきましたが、家を構成するパーツは屋根・壁・窓などいくつもあり、それぞれのパーツに求められる性能には違いがあります。高性能なパーツであっても、一か所だけでは効果が発揮できない場合もあります。
快適な暮らしを長続きさせるには、それぞれのパーツが性能を発揮させることで実現できます。では続いて、それぞれのパーツの特徴や性能を左右するポイントを紹介します。
屋根
屋根は、家を雨から守るというのが基本性能です。そして家の外観を大きく占める部分でもあり、屋根によって外観の印象が左右されます。
そんな屋根は、日中紫外線に晒され続けるという過酷な環境にあるため、数十年にわたって雨風をしのぎ続けるための耐久性や、過酷な環境下でも劣化しにくい素材を選ぶ必要があります。また、外気の温度が家の中に侵入するのを防ぐために、高い断熱性能が求められる場所です。
壁
壁の主な役割は、雨風をしのぎ地震から家を守ることです。そのほかにも、家の中を快適な温度に保ったり、外部からの視線や泥棒や空き巣の侵入を遮ったりなど、住む人の暮らしを守る大切な役目があります。
数十年単位で劣化することなく維持するためには、耐久性が必要不可欠です。さらに、壁の気密性が高いことで、壁の中にある断熱材や柱などが湿気で劣化するのを防ぐことにつながります。
柱
柱は壁とともに家を支え、地震から家を守る大きな役割があります。家をつくる骨組みであり、長年にわたって劣化することなく、支え続けるための耐久性が必要となります。
木と鉄骨を比較した場合、木の方が軽量にもかかわらず耐震性はひけをとらず、断熱性能や材料の寿命は圧倒的に木の方が優れています。また、材料費が安くコストが抑えられますが、シロアリに弱いという弱点があります。
窓
住宅において窓は、室内と外をつなぐ大きな役割があります。窓を開けることで風を家の中に入れることもあれば、窓を閉めた状態でも、外の景色を眺めたり、光を取り入れて部屋を明るくしたりと、外とつながることができます。
ゆえに、最も熱の出入りが激しいのが窓です。建物の熱は、夏には約70%の熱が窓から入り、冬には約50%もの熱が窓から逃げているとも言われています。また、太陽光による日射エネルギーも窓から入るため、紫外線カット機能があるものを選ぶことや、光を室内に取り入れる設計上の工夫が必要です。
床
床は材質や色次第で、室内の印象を大きく変えるパーツです。また、歩いたり座ったり寝転んだりする場所であるため、温度を感じやすい場所のひとつです。
人や家具など全ての荷重がかかる場所なので、強度や耐久性が求められる場所です。さらに健康面や快適性においても、保温性・断熱性・耐衝撃性は必要と言えるでしょう。掃除のしやすさや、転倒などを考え、清掃性・クッション性・防滑性などの性能があるものを選ぶとなおよいでしょう。
吹き抜け
吹き抜けとは、建物の内部に高い天井を設け、上部に開口部を設けた空間のことを指し、開放的な空間になるのが特徴です。また、高い場所に光が入る場所をつくることで、陽当たりがよく部屋全体を明るくさせることができます。
ただし、家の性能が悪いと夏は暑く、冬は寒くなりやすく、広さがある分エアコンの効きが悪くなり、光熱費が高くなるというデメリットがあります。また天井に高さがあるため、メンテナンスや掃除がしにくい面もあります。
隙間
家に隙間など無いように思いがちですが、実は木と木のつなぎ目や、窓やドアの周囲、配線、配管やコンセントボックス周りなどにも小さな隙間は無数に存在します。そして、建物の中の熱気や湿気を排出するための重要な役割を果たしている隙間も存在します。
目で確認しにくい部分も多くあるため、家の隙間面積を表すC値を見て判断するとよいでしょう。また、疑問点や不安に思うことは、専門的な知識を持った人に相談するようにしましょう。
換気
壁の接着剤などに入っている化学物質が原因で起こった、シックハウス症候群と呼ばれる頭痛や目眩など症状がでる健康被害が多発したことにより、日本の住宅は24時間換気システムの設置が建築基準法により義務付けられています。
また、近年起こったパンデミックの影響で、ウイルス感染対策などで喚起への関心が高まっています。換気の種類には自然換気と機械換気の2種類があり、効率的な空気の流れを作ることで電気代の節約にも繋がります。
まとめ
長い時間を過ごす家を建てるときには、理想的な暮らしのためにも設計プランやデザインと同時に住宅性能についてもしっかり考えることが大切です。さらに家の性能に加えて、今後のライフスタイルの変化も考慮した家づくりをすることで、長く住み続けられるうえ、資産価値を長期間維持できます。
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