COLUMN コラム
Soraie一級建築士コラム
家の中の温度差を減らすには?引戸と空調計画の考え方
2024.04.8
Soraie一級建築士コラム|Vol.5
少ないエネルギーで温度差の少ない暮らしを②
暖かさ・涼しさを、必要な場所へ届ける
こんにちは。空間デザイン住宅Soraieの一級建築士、小野です。
リビングでは暖かく過ごせているのに、廊下へ出るとひんやりする。
洗濯や着替えのたびに、脱衣室の寒さが気になる。
家じゅうを快適にしたいときには、断熱や気密に加えて、冷暖房した空気が、必要な場所へ届くようになっているかも考える必要があります。
私は、このことを「エネルギーを届ける」と表現しています。
少し分かりにくい言葉かもしれませんが、今回は主に、エアコンで暖めたり冷やしたりした空気を、家の中でどう動かすかというお話です。
どこを開けて過ごすのか。
どこは閉めて使いたいのか。
そして、閉めた場所をどう暖めたり冷やしたりするのか。
間取りと暮らし方、空調を一緒に考えることが、温度差の少ない家づくりにつながると考えています。

目次
冷暖房の能力が足りても、別の部屋まで届くとは限りません
前回のコラムでは、UA値やC値を、暮らしと冷暖房の計画に使うことについてお話ししました。
断熱・気密を高めれば、同じ範囲を同じ室温に保つための冷暖房の負担を抑えやすくなります。そのうえで、建物に合った設備の能力や設置位置、空間のつながりを考えます。
ただ、家は大きな一部屋だけでできているわけではありません。
リビング、廊下、洗面室、脱衣室、寝室、子ども部屋。
間には壁や建具があり、暮らす場面によって開けたり閉めたりします。
エアコンに必要な能力があっても、暖めた空気がリビングの周辺にとどまっていれば、離れた場所へ十分に熱を届けられないことがあります。
「どのくらいの冷暖房能力が必要か」と、「その冷暖房をどこへ届けるか」は、別々に確認したいことです。
能力だけを大きくする前に、空気の通り道や設備の配置も見直しておきたいと思っています。

引戸で空間をつなぐと、人も空気も通りやすくなります
Soraieでは、「ワンフロアに使う家づくり」を大切にしています。
部屋を一つずつ並べるだけでなく、ご家族がどう動くかを考え、なるべく行き止まりの少ない動線をつくる。
そして、その空間同士を引戸でつなぎます。
例えば、帰宅して手を洗い、上着やかばんを置き、着替えてからリビングへ向かう。
洗濯物を洗い、干して、しまう。
こうした動きを考えたとき、行き来のたびに建具を開閉するより、必要な間は開けておける方が使いやすいことがあります。
引戸は、開いた戸が通路側へ張り出さないため、空間をつないで使う計画に取り入れやすい建具です。
そして、開けた部分は、人だけでなく、冷暖房した空気の通り道にもなります。
使いやすさと温度差の少なさを、同じ間取りの中で考える。
それが、引戸を取り入れる理由の一つです。
もちろん、引戸を開ければ必ず家じゅうが同じ温度になるわけではありません。間取り、開口の大きさ、エアコンの位置なども含めて考えます。

ただし、「開けっ放しなら必ず省エネ」ではありません
ここは、誤解のないようにお伝えしておきたいところです。
リビングだけを暖めていた状態から、廊下や脱衣室まで暖めるようにすれば、冷暖房する範囲は広がります。
そのため、建具を開けたことだけで、必ず電気代が下がるとは言えません。
高断熱の良さは、広い範囲を快適にするときにも、外へ逃げる熱や外から入る熱を抑えられることです。高断熱住宅の設計ガイドでも、空間をつなぐ構成と、その住宅に合った冷暖房方式を組み合わせる考え方が示されています。
私たちが考えたいのは、
必要な場所を、必要な快適さに保つために、どのような方法が合っているか。
ということです。
廊下も含めて暖かく過ごしたいのか。
使う時間が限られる部屋は、個別に調整したいのか。
どこまでを一緒に冷暖房するかも、ご家族の暮らし方と合わせて決めていきます。

閉めて使いたい場所を、先に教えてください
ここまで読むと、
「引戸を開けておけばよいのですね」
と思われるかもしれません。
でも、実際の暮らしでは、いつもすべてを開けておけるわけではありません。
寝室では、音や明かりを気にせず休みたい。
子ども部屋では、落ち着いて勉強したい。
玄関から、リビングの奥まで見えないようにしたい。
トイレや着替えの場所も、開けたまま使うわけにはいきません。
こうした希望は、どれも自然なことだと思います。
だから私は、「快適にするために、ドアを開けて暮らしてください」で終わらせたくありません。
閉めて過ごす部屋には、その状態に合った冷暖房の方法が必要です。
個別のエアコンを設けるのか。
別の空間から空気を送る仕組みを考えるのか。
設備の配置や間取り自体を調整するのか。
方法を先に決めるのではなく、閉めて使いたい理由と時間帯を伺い、その家に合う方法を考えたいと思っています。

コンセプトハウスでは、エアパス用ファンも試しました
閉めた場所へ空気を届ける方法の一つとして、Soraieでは浦安本町コンセプトハウスで、三菱電機の「エアパス用ファン」を使った室内送風を試しました。
2024年公開の元記事で紹介した、個別の設置・検証事例です。
目的は、リビングで冷暖房した空気を、建具を閉めた状態でも玄関ホール側へ届けやすくすることでした。
テレビ上方の壁面に設けたファンが、そのための設備です。
エアパス用ファンは、冷暖房している空間から別の空間へ空気を送り、空調を補助するためにも使われる製品です。
ファン自体が、エアコンのように空気を暖めたり冷やしたりするわけではありません。
すでにつくった暖かさ・涼しさを、別の場所へ運ぶ手助けをする。
そのように考えると、分かりやすいと思います。
ただし、設置すれば必ず同じ効果が得られるわけではありません。メーカーも、断熱性能、間取り、空調機の能力、換気方式などによって効果が異なると説明しています。
Soraieのすべての住宅に、同じファンを付ければよいという話ではありません。
一つの方法として試し、その住宅と暮らし方に合うかを考えることが大切です。

空気の「行き先」と「戻り道」、換気も一緒に考えます
室内の空気を循環させる計画では、送り出す場所だけでなく、送った先から空気がどう戻るかも考えます。
行き先が狭かったり、通り道が十分でなかったりすれば、想定したように空気が流れないことがあります。
「ファンを一つ付ければ完成」とは考えず、送風量、通気の経路、建具を閉めた状態まで確認しておきたいところです。
また、通気する部分を設けるときには、音や視線への配慮も必要です。
そして、室内で空気を動かすことと、外の空気を取り入れて換気することは、同じではありません。
室内送風のファンだけで、24時間換気の代わりになるわけではありません。住宅では、シックハウス対策などのために必要な換気を確保することが求められています。
トイレの臭いや浴室の湿気を、ほかの部屋へ広げたいわけでもありません。
暖かさ・涼しさの届き方と、空気の清潔さ、その両方を考える。
間取りと空調、換気を一緒に検討する意味は、ここにもあります。

開ける・閉める・送風する。実際に測って比べました
では、建具の開閉やファンの使用によって、実際にはどのくらい違いが出るのでしょうか。
Soraieでは、浦安本町コンセプトハウスの複数の場所に温度計を置き、状態を変えながら記録しました。
比較したのは、次の3つです。
- 引戸を開けて、空間をつないだ状態
- 引戸を閉めて、空間を仕切った状態
- 引戸を閉め、エアパス用ファンで室内送風した状態
建具を開ける対象や、閉めておく場所も含めて条件を設定し、温度の変化を確認しています。
ただし、測定結果は、その建物と設備、運転方法、外気温や日射などの条件と合わせて読む必要があります。
ある場所の温度差が小さくなったからといって、別の家でも同じ結果になるとは限りません。
具体的な結果と条件は、続くVol.6でお話しします。
今回はまず、「性能が高いから大丈夫」と考えるだけではなく、空気の届け方を計画し、実際に確かめることも大切だとお伝えしたいと思います。

測定記録:浦安本町コンセプトハウス、2023年12月〜2024年1月。
各行は測定日時・外気温などの条件が異なるため、この表だけでエアパス用ファン単独の効果や電気代の削減を示すものではありません。「全部引戸オープン」の条件でも、トイレの扉は閉めています。詳しい測定条件と結果はVol.6で解説します。
間取りの打ち合わせで、確認したい3つのこと
これから家づくりをされる方は、間取り図を見ながら、次のことを話してみてください。
「普段、どの建具を開けて過ごしますか?」
帰宅したとき、家事をするとき、家族でくつろぐとき。生活の場面ごとに考えてみます。
「どの部屋は、閉めて使いたいですか?」
寝室や子ども部屋だけでなく、来客時の視線、着替え、音や臭いも含めて整理します。
「閉めた状態では、どう暖めたり冷やしたりしますか?」
ここまで説明してもらうと、間取りと空調が、その暮らし方に合っているかを考えやすくなります。
難しい設備の名前が分からなくても構いません。
「ここは開けておきたい」
「ここは閉めたい」
というご希望が、設計にとって大切な情報になります。

快適さのために、暮らし方を我慢しない家へ
家じゅうの温度差を小さくすることは、大切です。
ただ、そのためにプライバシーや使いやすさを諦めなければならない家にはしたくありません。
普段は空間をつなげて、家事や移動をしやすくする。
閉めたいときには閉められて、そのときの冷暖房も考えてある。
そうした住まいを、ご家族の暮らし方に合わせて計画したいと思っています。
Soraieは、営業を置かず、建築士がお客様のご要望を直接伺いながら家づくりを進めています。
間取りの打ち合わせは、部屋の数と広さを決めるだけではありません。
人がどう動き、空気がどう動き、家族がどう過ごすかを考えること。
性能と使いやすさを、同じ図面の中で考える。
その積み重ねが、温度差の少ない、暮らしやすい家につながると思っています。
空間デザイン住宅Soraie
一級建築士 小野 貴士
参考情報
環境共生まちづくり協会|高断熱住宅の設計ガイド〔国土交通省編集協力・PDF〕
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「リビングだけでなく、廊下や脱衣室も快適にしたい」
「引戸でつながる間取りに興味がある」
「寝室や子ども部屋は、閉めて使いたい」
そんなご希望から、お話しください。
Soraieでは、一級建築士が暮らし方とご予算を伺いながら、性能・間取り・設備の組み合わせを一緒に考えています。
売る人ではなく、家をつくる人と話す。
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