ZEH住宅は、エネルギー効率や断熱性能に焦点を当てた新しい住宅のかたちです。環境問題が悪化している今、このZEH住宅はさまざまな住宅に採用されています。
環境へ配慮した住宅を建てることは、住む人の快適さを実現することにもつながります。そのため、注文住宅を建てる際に、ZEH住宅を選択する家庭が増えているのです。
そこで今回は、ZEH住宅とはどのような住宅なのか、メリットやデメリットもくわしく紹介します。
ZEH住宅とはどのような住宅?
ZEH住宅という名前を聞いたことがある人も多いと思いますが、どんな特徴がある住宅なのか正しく説明できる人は少ないのではないでしょうか。
脱炭素社会の実現に向けて重要な住宅なので、ZEH住宅に少しでも興味のある方は、最後までご覧ください。
ZEH(ゼッチ)住宅とは
ZEH住宅は、日本を中心に普及している、持続可能でエネルギー効率に優れた住宅です。名前である「ZEH」は「Zero Energy House」を意味しており、ゼロエネルギー消費を目指す住宅を指します。
定義
ZEH住宅は、一年間を通じて消費するエネルギー量が、再生可能エネルギーから供給されるエネルギー量とほぼ同等か、それを上回るほどのエネルギー効率が高い住宅を指します。要するに、ZEH住宅はエネルギーの自給自足を実現し、ゼロエネルギーもしくはプラスエネルギーの状態を目指す住宅として定義されます。
ZEH住宅の特徴
ZEH住宅は、環境に配慮した住宅であり、ゼロエネルギー消費を目指す住宅であるとご紹介しました。ZEH住宅と認定されるためには、ZEH基準と呼ばれる規定をクリアしていなくてはなりません。
そこでここからは、ZEH住宅の3つの特徴をご紹介します。地球にやさしく、住む人にもやさしいZEH住宅とはどんな特徴があるのか、特徴をみていきましょう。
断熱
ZEH住宅は、優れた断熱機能を持っています。高断熱かつ高気密なので、季節にかかわらず快適に暮らせるのが魅力です。
具体的には、適切な断熱材の設置、窓の選定、外壁の選定などを行うことで、断熱性を高めます。とくに、断熱材の種類や設置場所は重要で、適切な場所に高性能の断熱材を使用すると、高断熱の住宅になります。
ZEH住宅は、断熱性に優れているので冷暖房効率がいいです。屋外の気温を中に持ち込まず、屋内の気温を逃がさないので一定の気温を保てます。
室内の温度が変化しづらいので、冷暖房の使用頻度が減ります。それにより、快適かつ節約にもつながるでしょう。
省エネ
日本では、経済産業省が策定した「ZEH認定基準」がZEH住宅の省エネ効果を評価するための指針となっています。この基準では、ZEH住宅が一年間のエネルギー消費量において、特定の目標を満たすことが必要です。
なかでも特徴的なのが「HEMS」というシステムの導入です。ホームエネルギーマネジメントシステムの略語で、エネルギーの使用状況をモニタリングし、最適なエネルギー管理をサポートします。
また、ZEH住宅は省エネ効果の高いLED電球を使用したり、換気システムの導入で冷暖房効果を高めたりすることで、省エネ効果を高めています。省エネでありながら、住む人が快適に暮らせるような工夫を凝らしているのが特徴です。
創エネ
ZEH住宅は、住宅自体がエネルギーを生み出す仕組みをつくっています。具体的には、再生可能エネルギー源を活用して、自宅で使用するエネルギーをつくりだします。
再生可能エネルギー源となるのは、太陽光発電、風力発電、バイオエネルギーなどです。このような設備を設置し、消費エネルギーよりも創エネルギーが上回るような作りにします。
また一部のZEH住宅では、エネルギーストレージシステムを導入して生成したエネルギーを蓄えることができます。このシステムは、夜間や天候が悪いときに自家消費率を高められる画期的なシステムです。
ZEHの普及率
ZEH住宅は脱炭素社会に向けた効果的な住宅ですが、実際はどれくらい普及しているのでしょうか。2012年にZEH住宅の支援事業が始まり、当時は年間で400件程度しか建てられていませんでした。しかし、年々その数は増えていき、2020年には年間66,000件程建てられています。
また「ハウスメーカーが建てる注文住宅のうち半数以上をZEH住宅にする」という政府の目標を達成したハウスメーカーは、50%を超えています。全体では25%ほどにとどまっているため、さらなる普及活動が重要でしょう。
ZEH住宅の種類は主に3つ
ZEH住宅はいくつかの種類に分かれています。戸建て住宅の場合は、ZEH、ZEH Oriented、ZEH +の3種類です。
それぞれ、異なるエネルギー効率の目標や基準が設定されています。ここからは、ZEH住宅で主要とされている3種類について説明します。
つま先
ZEHの基本的な目標は、一年間を通じて消費するエネルギー量を、再生可能エネルギーによって作り出されたエネルギーで100%まかなえることです。さらに、省エネルギー率は20%以上であることが必要です。
つまり、エネルギーの自給自足を目指し、ゼロエネルギーもしくはプラスエネルギーが可能な住宅を指します。しかし、なかには設備条件を満たしていても、寒冷地などの立地によって創エネルギーが充分に生成できない場合もあるでしょう。その場合は、Nearly ZEHという補助制度が適用され、省エネルギー率が75%以下で問題ないとされています。
ZEH志向
ZEH Orientedは、都市部などの狭い場所でZEH住宅を建てたいけれど、再生可能エネルギーのシステムを設置できない場合に建てられる住宅です。ZEHの基準と違うのは、再生可能エネルギーのシステムを設置しなくても補助金の対象となる点です。
ZEH Orientedの基準が認められるのは、敷地面積が85㎡未満で、かつ2階建て住宅を建てる場合に限ります。なお、ZEHと同じく省エネルギー率は20%以上ないと認定されないので注意しましょう。
トー+
ZEH +は、ZEH住宅の基準を満たしたうえで、さらにいくつかの要件を満たしたレベルの高い住宅です。まず、省エネルギー率は25%以上でないといけません。そして「電気自動車の充電設備の設置」「HEMSを設置し住宅内のシステムを制御」「外皮性能の強化」の3つの中から2つ以上の項目をクリアする必要があります。
また、ZEHと同じように、寒冷地などではNearly ZEH +の制度が適用されます。創エネルギー率が100%ではなく75%で問題ないという点に違いがあり、この条件を満たしていれば補助金対象です。
ZEH住宅のメリット
ZEH住宅は、住む人が暮らしやすい住宅であり節電効果もあるので、年々注目されている住宅です。注文住宅を建てようと思っている方のなかには、ZEH住宅を選択肢として考えている方もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、ZEH住宅のメリットをご紹介します。注文住宅を依頼しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
光熱費の削減ができる
ZEH住宅は、前提として完全なる電気の自給自足を目指した住宅です。省エネ効果が高いので、光熱費の削減ができます。
ZEHやZEH +の住宅であれば、100%再生可能エネルギーで電気をつくりだすので、実質電気代はかかりません。完全に電気代をまかなえなかったとしても、一般的な住宅に比べて大幅に光熱費を削減できるでしょう。
非常時でも電気が使える
ZEH住宅は、自宅で充分な電気をつくりだせるので、万が一災害で停電が起こったとしても電気が使えなくなることはありません。太陽光発電であれば、雨が続かない限り、電気には困らないでしょう。
また、ZEH住宅のなかには、つくりだした電気を貯蓄しておくシステムを導入している住宅があります。その場合、災害時に電気をつくりだせなかったとしても、事前に貯めておいた電気でまかなえます。日本は、地震や水害などの災害が多いので、非常時に電気が使える住宅を建てるのは安心でしょう。
一定の室温を保ちヒートショックを防ぐ
ZEH住宅は、高断熱・高気密なので、室温を一定に保ちやすいです。外気温に室内温度が左右されにくいつくりをしているので、夏場は涼しく、冬場は暖かさを保てます。
室内温度が一定であることは、快適さだけがメリットではありません。冬場にお風呂場で起こりやすいヒートショックを防げます。
ヒートショックは、急激な気温差で血圧が上下し、心筋梗塞や脳卒中などの病気につながる危険な状態です。高齢者に起こりやすい症状なので、住人に高齢者がいる場合はZEH住宅を検討するといいでしょう。
ZEH住宅のデメリット
ZEH住宅は環境問題の面においても、住む人からしても、メリットの多い住宅であることがわかりました。しかし、どんな住宅にも少なからずデメリットが存在します。
デメリットを理解しておくことで、不安を解消したうえで注文住宅を購入できるでしょう。そこでここからは、ZEH住宅のデメリットと考えられる3点をご説明します。
初期費用が高い
ZEH住宅では、断熱性を高めるために高品質な断熱材を使用したり、再生可能エネルギーシステムを取り付けたりするので、一般的な住宅よりも初期費用が高くなります。長い目で見れば、光熱費の削減などでもとがとれる可能性が高いですが、住宅を購入する時点での費用は高くなることを覚えておきましょう。
ZEH住宅は補助金の対象であるとお話しましたが、ZEH住宅と認められるためにHEMSなどの機器を設置しなければなりません。そのため、機器の代金や設置費用も初期費用に含まれます。住宅を購入する段階で資金に余裕のある方は、ZEH住宅を購入してローンを組んでしまった方が、あとあと楽になるでしょう。
デザインや間取りが制限される
ZEH住宅と認められるには、いくつかの条件があります。そのため、理想としているデザインや間取りが制限される可能性があることは覚えておきましょう。たとえば、断熱性や気密性を高めるために、窓の数や大きさに規定があります。
また、太陽光パネルを設置する場合には、日当たりや屋根のかたちにも制限があるでしょう。完全なる理想の住まいはむずかしいかもしれませんが、建築会社と相談することで理想に近づけることは可能です。
メンテナンスコストもかかる
ZEH住宅では、再生可能エネルギーをつくりだすために太陽光発電を取り入れる住宅が多いです。しかし、太陽光発電システムは、定期的なメンテナンスが欠かせません。
日々のメンテナンスも大切ですが、定期的に業者へのメンテナンス依頼をすることが必要で、1回10万円前後の費用がかかります。太陽光発電の業者のなかには、10〜15年ほどの無料点検期間を設けている業者もあるので、事前に保証内容を確認しておきましょう。
ZEH住宅を建てる際に利用できる補助金
ZEH住宅は初期費用がかかるとご説明しましたが、環境に配慮された住宅なので国から補助金がでます。補助金をうまく利用すれば、高性能な住宅を比較的安く建てられるので、知っていて損はありません。
そこでここからは、ZEH住宅を建てる際に利用できる補助金をご紹介します。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業とは、子育て世帯や夫婦のどちらかが39歳以下の若年夫婦世帯がZEH等の省エネに配慮した住宅を購入する際に受けられる補助です。具体的には、延床面積が50平米以上のZEH住宅を新築購入した場合に、1戸につき100万円支給されます。
リフォーム工事の場合でも、30〜60万円の補助が受けられるので、ZEH住宅を建てようと思っている子育て世帯の方は、ぜひ概要を確認しておきましょう。
地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業とは、省エネで環境に配慮した住宅を建てる場合に、政府から建築費用の一部が補助される制度です。この事業は、環境問題が悪化している現代において、地域に省エネの木造住宅を増やしていきたいという政府の考えで生まれました。対象となるのは、長期優良住宅やZEH住宅です。
この事業によって補助される金額は70〜140万円となっています。ZEH住宅であれば基本的に補助が受けられますが、加えて子育て世帯やバリアフリーを導入している住宅などは追加で補助金がもらえるので、くわしい内容を調べておくといいでしょう。
まとめ
今回はZEH住宅はどんな特徴がある住宅なのか、そしてメリットやデメリットは何かを説明してきました。ZHE住宅は、環境に配慮された住宅であることはもちろん、住む人の健康を守る住宅でもあります。家の中で快適に暮らせるのは、思っている以上に重要な要素です。