「ライフサイクルコスト」という言葉を聞いたことはありますか?
とくに設備投資を行う際、このライフサイクルコストは費用対効果を考えるやり方として非常に重要なポイントとなります。ライフサイクルコストによっては、事業収支を大きく変化させることもあるでしょう。
そこで今回はライフサイクルコストの重要性や、できるだけコスト低減させるコツなどについて解説していきます。
目次
ライフサイクルコストとは
そもそもライフサイクルコストとは、建物や道路といった構造物や商品などがつくられてからその役目を終えるまでにかかる費用を、総合的にとらえたものです。ライフサイクルコストのほかには、生涯費用や省略してLCCといった言葉で表されることもあります。
たとえば住宅のライフサイクルコストは、建設から解体に至るまでの総費用(生涯費用)を示すものです。
建設の際に,耐久性の低い構法や低品質の材料・部材を採用すると,仕上げ材や柱や梁などの構造材等が劣化(腐朽・蟻害,腐食)し、住宅全体の耐久性にも影響を及ぼすことがあります。その場合は、築後年数が少なくても大きな補修や建て替え等の費用が必要になることがあります。
また、断熱・気密性能が低い場合は,光熱費が高額になることがあります。
住宅の建設費用等のイニシャルコストだけではなく,ライフサイクルコストやライフプラン(人生設計)も考えて,費用対効果(コストパフォーマンス)の高い住宅を計画することが重要です。とくに建物のように長持ちして費用がかかるものは、ライフプランに影響をおよぼす要素のひとつでもあるため、このライフサイクルコストの考えを取り入れるのは非常に重要です。
ライフサイクルコストの構成要素
では、具体的にライフサイクルコストはどのような構成要素で成り立っているのでしょうか。
ライフサイクルコストはおもに、建設費・点検費・保守費・水道光熱費・清掃費・警備費・更新費・解体処分費・消耗品費などが挙げられます。また実際に住み続けるとなれば、清掃費や修繕費、メンテナンス費用などが掛かってきます。
ほかにも、税金や保険料などもライフサイクルコストの要素に含まれます。つまり、建物に関わるありとあらゆる費用を総合的に足したものは、すべてライフサイクルコストということです。
多くの人は、建設費といった初期費用の額にとらわれがちですが、初期費用をおさえすぎるとかえって修繕費がかかってしまうケースも珍しくありません。
したがって、初期費用をかけたくないのであれば、総合的にいくらかかるかなどのライフサイクルコストを考えることが大事です。
ライフサイクルコストは3つに分けられる
前にも述べたように、ライフサイクルコストは建設から解体までのトータルでかかる費用のことをあらわします。また建築においてのライフサイクルコストは、大きくイニシャルコスト・ランニングコスト・メンテナンスコストと呼ばれるもので構成されます。
ここでは、イニシャルコスト・ランニングコスト・メンテナンスコストの内容について、それぞれ詳しく解説していきます。
イニシャルコスト
イニシャルコストとは、簡単にいうと初期費用のことを指し、建築でいうとおもに建設費がこれにあたります。また建設費には、企画や設計、施工に必要な費用や土地取得にかかる費用が含まれます。
新築ではとくにこの建設費の金額に注目しがちですが、ここでコストカットしてしまうと住宅の耐久性などに影響する恐れもあるので、注意しましょう。
ランニングコスト
ランニングコストというのは主に運用にかかる費用のことを指し、建築では水光熱費や運営管理費のほかにも、その間にかかる固定資産税や火災保険などもこれにあたります。
このようにランニングコストは、ほかのものと比べても種類や費用も大きいことが特徴的です。よくあるのは、イニシャルコストでローコストに抑えて、その後にかかるランニングコストでお金がかかるケースです。
ランニングコストは、長く住めば住むほど費用がかさむため注意しましょう。家を建てる際はイニシャルコストだけではなく、ランニングコストまで想定して計画することが重要です。
メンテナンスコスト
メンテナンスコストは主に修繕・維持費にかかる費用をあらわし、具体的には屋根や外壁、住宅設備や内装に関わる清掃や点検、修繕・管理、更新、改修などが挙げられます。
メンテナンスコストは基本的に35年間で想定し、築年数が重なるほど金額が増えていく仕組みとなっています。劣化や老朽化にともなうものなので、ランニングコストなどのようにタイミングがつかめず、予想外の出費となるケースがほとんどです。
ライフサイクルコストの重要性
ここでは、ライフサイクルコストの重要性について解説します。
コストの試算
ライフサイクルコストは前にも述べたように、ランニングコストが最も高い比重を持っています。一般的にランニングコストは、ライフサイクルコスト全体のおおよそ4分の1程度かかるとされています。
「ランニングコストはそこまで重要ではないのでは?」と考える人も多いかも知れません。しかし家を建てる際は、初期費用の安さだけにとらわれず、将来のことまで考えてどんな設備を導入するべきかなど、中長期的な面まで考える必要があります。
コストの最適化
定期的に建物の修繕を行うことで、トータルとしての建物のライフサイクルコストを最適化できます。企業やビル所有者のなかには、事前にライフサイクルコストの長期修繕計画を作成し、建物自体の資産価値を維持・向上するところも多くあります。
ただしこのメンテナンスには、外壁や空調設備の内外部など広範囲に至るため、同時に実施するとかえって効率やコストがかかる可能性があるので注意しなければいけません。
メンテナンスを行う際は、実施する場所やタイミングをできるだけ分散させることがポイントです。
コストの誤差
一般的な建物の寿命はおおよそ60年程度だとされていますが、建物に住み続ければ住み続けるほどライフサイクルコストの計算には誤差が生じるため、気を付けなければいけません。
また、ライフサイクルコストの誤差は、事前に把握できる範囲にとどまるとは限らず、予想外の出費などを要する可能性も充分あります。したがって、家を建てる際は企画の段階で、そのような誤差があることも織り込んで検討することが大切です。
ライフサイクルコストが変化する例
ライフサイクルコストは先にも述べたように、事前に見積もっていたとしても予想外に誤差が生じる可能性があります。そこで今回は、ライフサイクルコストが変化してしまう具体例についていくつかご紹介します。
設備や建物の老朽化
設備や建物の老朽化にともなう修繕費や設備更新費は、ライフサイクルコストを大きく変える要因の一つです。
当然ながら建物や設備は使っていけばいくほど、経年劣化や自然風化などによる老朽化が進みます。また、建物や設備には一般的に耐用年数が決まっていますが、これはあくまで目安なのでこれよりも早い時期に故障や破損するといったケースも決して珍しくありません。
ほかにも、急な自然災害などよりこのライフサイクルコストは増えていきます。
時代のトレンドの変化
ライフサイクルコストは、時代トレンドの変化などでも変わってきます。これに関しては事前に計画していても、建築技術をもってしても完璧に予想するのは困難だとされています。
たとえば、時代の流行にともなうデザインの変化や燃料価格による光熱費の高騰、建築工事や材料費の変動、税法の改正などが挙げられます。
建物の資産価値の向上
マンションなどの場合は
建物の資産価値を上げて売却額や運用益を増やす方法も、ライフサイクルコストを変化させる要因の一つです。資産価値を上げる方法はいくつかありますが、バリアフリーやトレンドデザイン、最新技術搭載への改修工事・設備導入などが挙げられます。
建物の資産価値を上げて収益を得れば、これまでかかってきた費用を埋め合わせができるメリットがあります。ただし設備導入費や運用維持費が高額だったり、他の出費と重なってしまう場合は、かえって損につながる可能性もあるので注意が必要です。
ライフサイクルコストを低減する方法
建物のライフサイクルコストを減らせば、住宅を長持ちさせたい人や不動産投資を行いたいと考える投資家にとっては大事なポイントになります。
では、ライフサイクルコストを下げるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、ライフサイクルコストを低減する方法についてご紹介します。
長寿命かつ耐久性に優れた資材の採用
ライフサイクルコストを減らすには、長寿命かつ耐久性に優れた資材を選ぶといった方法があります。購入の際は高コストに感じるかもしれませんが、そうすることで修繕や更新といったメンテナンスコストの削減にもつながるのでおすすめです。
また、長寿命化のためにこまめに設備を管理・点検することも有効です。検討している方は、専門家と連携し長期的な修繕計画を事前に立ててみてください。
エネルギー及び水の使用量の削減
エネルギーや水の使用量の削減を行うことでも、ライフサイクルコストを下げられます。具体的には、省エネを目的とした設備に取り替えるなどの方法が挙げられます。最近では、LEDの導入や断熱材を用いた建築、空調設備の導入などがそれにあたります。
また、環境省や経済産業省が推奨する建物のなかには、ZEB/ZEHと呼ばれるエネルギー消費量と建物でつくるエネルギーをゼロにするものもあります。
省エネに特化した建物にすることのメリットには、のちに資産価値を高めることにもつながるため、きちんとエネルギーマネジメントを行ったうえで導入を検討してみてください。
維持・管理しやすい体制の構築
将来かかる費用を考えて、あらかじめ維持・管理しやすい体制を構築することもコストカットにつながります。たとえば、部品などの交換がしやすいものや、比較的メンテナンスフリーで保全できるものを選ぶのがコツです。
また、ここで特殊な設備や資材を使うと割高となるので、できるだけ継続的に入手・管理できるものを選ぶことも、ライフサイクルコスト削減につながります。
ライフサイクルコストを考慮した住宅の選び方
ライフサイクルコストを考えた住宅選びとは、具体的にどのような点に気を付ければいいのでしょうか。ここではライフサイクルコストを考慮した住宅の選び方のコツについてご紹介します。
外装材
ライフサイクルコストを抑えるには、外装材の資材にこだわるといいでしょう。外装材とはおもに家の外部を守る材料のことを指し、外壁だけではなく屋根や瓦といったものが挙げられます。
たとえばこの外装材をタイルにすれば、比較的雨や風、紫外線などによる影響を受けにくくなるほか、時間がたってもきれいな状態をキープできることもポイントですね。。
さらに摩擦などにも強い素材のため、外壁塗り替えの費用や修繕費、メンテナンス費用なども抑えられるメリットもあります。
内装・屋根
ライフサイクルコストを削減するには、内装や屋根などの建材に防汚性や耐久性に優れたものを選ぶのもひとつです。
内装とはおもに、建物内部の壁や床、天井、装飾などをあらわします。内装に関しても外装材と同様に、建材によってはメンテナンスの頻度や修繕費などが変わってくるため、できるだけ長持ちするものを選ぶといいでしょう。
光熱費
断熱性や機密性能を高めることによって、水道・光熱費も変わってくるため、ライフサイクルコストを抑えたい方は水道光熱費も気を付けてみてください。
たとえば、窓に断熱のサッシをつける、床断熱を設置するなどに切り替えれば、光熱費を節約できるのでおすすめです。光熱費は生活をしていると必ずかかる費用なうえ、それにかかわる補修や修繕費なども積み重ねれば高額になります。
ライフサイクルコストを意識した家づくりは、結果として自分自身の暮らしを快適にするメリットにもつながります。建築業者によっては、実際にどれくらいのライフサイクルコストを抑えられるかをシミュレーションできるところもあるので、一度相談してみるといいでしょう。
まとめ
今回はライフサイクルコストの重要性や、できるだけコスト低減させるコツなどについて解説してきました。ライフサイクルコストは生活している間にかかる、ランニングコストの部分が最も高くなる傾向にあります。
一見、初期費用が抑えられたと思っていても、あまりにも安価な設備ばかりにしてしまうと、かえって修繕や交換が必要となり費用がかさむ可能性もあるので要注意です。
また、自然災害など想定できない要因によって思わぬ出費がかさむケースもあります。建築をする際はイニシャルコストだけではなく、ランニングコストを含めた総合的なライフサイクルコストまで意識することが、将来的な資産価値の向上のためにも重要なポイントです。
目指すものは安心感ではなくお客様を守る本当の安心
Soraieの住まい長期保証・点検システム