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Soraie一級建築士コラム

小野 貴士

一級建築士

08
Soraieの高性能住宅

スキン層・スキンカットという謎の言葉と壁体内結露 ~悪質なセールストーク~

2024.08.10

高気密高断熱には断熱材が大切です。断熱材は性能もですが、壁体内結露を起こさない事が大切。結露計算をして安心の家づくりを。

スキン層・スキンカットという謎の言葉 と 壁体内結露 ~住宅業界では許される悪質なセールストーク~

 

360°すべてにこだわる家づくりを。
Soraieの家づくりは「こだわること」を大切にしています。

「性能」にこだわり、「使いやすさ」にこだわり、「デザイン」にこだわり、「安心」にこだわり
そしてそれを全て高いレベルで「価格」にこだわる。
私たち自身が明日家を建てるなら、きっとすべてにこだわり納得したレベルで
そして納得できる価値・価格で家づくりをするだろうと考えるからです。

 

「吹付ウレタンフォームはスキン層というものがあって、それが水を弾いているので、それを削ってしまうとカビが生えるので、良くないと聞いたのだけど、Soraieさんはどう考えれているのでしょうか?」

 

最近ご相談にお越しになるお客様から、とても頻繁に聞かれます。

たまにではなく、本当に同じ質問を1日2回頂戴する事もあるので、単純にそう思った営業マンさんが言っているのではなく、ビルダーさん単位なのか、その営業所単位なのか解らないのですが、ある程度の組織単位で、そのようにお客様にお話しするマニュアルになっているのかなと思います。

※その後他のお客様からお伺いしたのですが、表面を削ったサンプルと削ってないサンプルを見せられて、そこに水を垂らして、水を弾く・弾かないの実験までして不安を煽っているようです。

!!透湿性と防水性は別物です!!

家の防水をする、透湿防水シートはその名の通りで、水は通さない(防水する)けど、湿気は通す(透湿性がある)性質で、家を守っています。

当たり前に使う物なので、建築業界に居る人なら全員知っているはずですので、

ここまで来ると意図的に感じてしまいますね。。。

 

「結論から言えば、そのような事実はまったくありません。」

 

そしてこれは、

「セールストークだからを超えて、事実誤認をさせる悪質な嘘」

と呼んでよいレベルだと思っています。

最近はすっかり聞かなくなった、気密住宅にすると、家が呼吸しなくなるので~、風通しが悪くなるので~、家に良くない。体によくないレベルの悪質な嘘だと思っています。

 

本当につっこみどころしかない。どころか根拠すらなく言われているので、突っ込むところも難しいのですが、言われている内容を考えてみました。

 

 

①壁の中にカビが生えるの?

まず壁の中にカビが生えるのか?といえば、これは可能性はあります。

「壁の中 カビ」などで検索いただくと、壁の中にカビが生えている画像がたくさん出てくると思います。

特に多いのはグラウウールが真っ黒になっている写真がたくさんヒットすると思います。

カビが発生するには、温度と湿度と栄養が必要になります。

なぜ壁の中に湿度があるのか・・・可能性として、雨漏りや水漏れじゃないのであれば、それは「壁体内結露」です。

結露自体は自然現象なので、どこでも発生します。

寒い冬の日の窓がビショビショに濡れていたり、夏の食卓に並んだグラスに水滴がついていたり。

これは小学校の理科でも習う、温度と湿度、飽和水蒸気量の関係でおこる結露の現象です。

 

この結露が壁の中で起こることを「壁体内結露」と呼びます。

この壁体内結露が起こり、壁の中に水気が起こることで、壁の中にカビが発生する事があります。

↑の画像のお話でいえば、グラスウールが悪い訳ではなく、壁体内結露をさせる状況が良くないのです。

 

②壁体内結露は何?

↑のとおり 結露現象はどこでも起こりえる自然の現象です。

ある温度では水蒸気でいられて空気が、冷やされて空気中に水蒸気でいられなくなると水滴となって現れます。

小学生の時に理科で実験もしたと思いますし、曲線になっているグラフもご覧になられた事があると思います。

例としては25℃の空気中には23g/㎥水蒸気は存在する事が出きます。ですが13.2℃だと11.5g/㎥しか水蒸気は存在する事ができません。

室温25℃で湿度が50%のとき、水蒸気量は11.5g/㎥存在するので、13.2℃に冷やされたサッシが室内にあるとここで結露します。

これはサッシでなくても、13.2℃以下になっていれば結露します。

(ただし気流が動いているなどあれば結露前に動いて結露しないです。)

これと同じことが壁の中で起これば壁体内結露です。

水蒸気も高い所から低い所へ移動していくので、冬は湿度の高い内から外へ移動しようとしますし、夏は外から内へ移動しようとします。

壁の中に入った水蒸気が、水蒸気でいられない温度に触れた時に結露します。

冬のサッシの結露がイメージされますが、可能性でいえば夏でも冬でも結露する可能性があります。

 

③壁体内結露はどうやって防ぐの?

 

サッシの結露自体本当に掃除も大変だし、枠を痛めるし大変なものですが、壁体内結露はもっと大変なものです。見えないし、掃除出来ないし、、、そのうちカビを生やして、体に影響を与えてしまう可能性もあってとても恐ろしいものです。

 

そんな恐ろしい壁体内結露を防ぐにはどうやったら?

 

そんな恐ろしい壁体内結露ですが、突然に何の理由もなく発生するわけではありません。

自然現象でもあるので、水蒸気量とその部材の温度を飽和させなければ発生する事もあり得ないという事です。

 

具体的に壁体内結露を防ぐにはどうするの?と言えば、

結露計算する事です。

 

材料には 断熱材だけではなく、外部面材にも、石膏ボードにも、壁紙にも、

建築に使われる材料は透湿抵抗(湿気のとおしくにさ)が決まっておりますし、大半が公表されています。熱伝導率(温度の伝えやすさ)も同様です。

 

つまり、壁の構成が決まれば、室内温湿度と屋外温湿度によって、どこの部材に水蒸気量がどのくらい存在するのか。その部材の温度は何度になるのかが計算できます。

これが結露計算です。

 

この結露計算を行う事で、その地域での考えられる温湿度で結露の可能性があるかないか考慮し、壁の構成を考える事で壁体内結露の可能性を少なくすることが出来ます。

 

逆に言えば、この結露計算以外で壁体内結露を防ぐことは出来ないとも言えます。

 

④スキン層ってあるの?スキンカットと壁体内結露と何の関係が?

 

そしてここから、よくいただくご質問の答えになります。

上記の通りカビが生える生えない(結露するかどうか)は、小学生の理科で習う結露の問題です。ではスキン層がそれに関係しているかどうか。

もし関係するのであれば、透湿抵抗や熱伝導率に変化がある場合のみです。

「スキン層があろうと無かろうと、透湿抵抗も熱伝導率も変わりません。」

 

これは断熱メーカーもはっきり公言しておりますし、実際に比較したデータを公表されているホームページもたくさんあります。

私自身の一次データではない為、ご興味ございましたら、

「ウレタンフォーム スキン層 透湿抵抗」などで検索かけてください。

著名な方もたくさん言及されていますし、根拠やデータもたくさん掲載されている方もいらっしゃいます。

 

つまり、透湿抵抗も熱伝導率も変わらないのであれば、スキン層があろうと無かろうと壁の中のカビには全く関係ないのです。

スキン層なるものは見た目には存在しますが、家に影響を与えるようなものとしては存在していません。

言い方を変えれば、スキン層が有ろうと無かろうと、壁の構成をきちんと検討して、結露計算をして、結露の可能性を検証する事が何より大切だという事です。

 

吹付ウレタンフォームのスキン層は人間の皮膚のように見えるので、まるで水を弾いて湿気も防いでくれるように言ってしまっていますが、そんな機能(湿気を通さない)もまったくありません。

 

冒頭の嘘の何が悪質かと言えば、本来スキン層があろうと無かろうと、きちんと結露計算して壁の構成を検討する事が重要なはずであるのに、

「スキン層なるものが存在して、それが湿気から壁を守っていて、スキン層があれば結露が防げるように事実誤認させる事」

にあると思います。

スキン層なる表面がちょっと水を弾くからといって、湿気を止めて壁体結露をとめてカビが生えないなんてあり得ません

結露計算もせず、スキン層を残しているから安心。スキン層が無いから危ない。などは絶対にありえません。

むしろスキン層を残すために、厚みを薄くするなら、透湿抵抗は下がり結露の可能性は上がっていきます。

スキン層なるものがそんな防湿する機能があるのであれば、夏型の結露で壁の中にカビが蔓延してしまうはずです。

 

建築業界には、もちろんセールストークや自社のPRはあって良いと思いますが、このような事実誤認させるような嘘は本当に良くないと思います。気密の事もですが、壁体内結露のことも、断熱の事も、計算や測定が義務付けられている訳ではないので、結構適当なセールストークが許される業界です。

ですが特にこの吹付ウレタンフォームのスキン層の事は、逆に壁体内結露を誘発する嘘でもあるだけに、ご注意頂きたいです。

もちろん吹付ウレタンフォームが壁体内結露を起こさないという事ではなく、熱伝導率・透湿抵抗を考慮して、きちんと検証するという事が大切という事です。

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