COLUMN コラム
Soraie一級建築士コラム
少ないエネルギーで温度差の少ない暮らしを。②「エネルギーを届ける。」
2024.04.8
Soraieの目指す家づくり
少ないエネルギーで温度差の少ない暮らしを
①「エネルギーを届ける。」
前コラムでUa値やC値。そして1種・3種の換気は何のため?という文章を書かせて頂きました。
高気密・高断熱も1種換気もその住まいで必要なエネルギーをなるべく少なくするためです。最近の住まいは何にせよ、冷暖房に必要なエネルギーが小さくなりました。
気密もとれていないような住まいは論外ですが、ある程度の気密性能があるお家という前提であれば、
例えば40帖の空間に必要なエネルギーは、
16帖のエアコンで十分なのか
12帖のエアコンで十分なのか
6帖のエアコンで十分なのか
の違いになっていると言う事です。
参考に上記の帖数は今でも大手家電量販店やエアコンメーカーが目安で使う帖数と言う事です。
暖房定格能力5.0KW 冷房定格能力4.0KWのエアコンが目安14帖用と表記されています。なぜこれが14帖用と表記されるかといえば、むかしむかしの、隙間だらけ(C値が悪い)で、断熱が入っていない・少ない(Ua値が悪い)住まいだと、14帖の空間であっても、5000Wのエネルギーが無ければ、温度をコントロールできなかったという事です。
なので、当たり前ですが今の住まいは気密は良くなり、断熱は良くなり、その空間で必要なエネルギーが小さくなって、昔は14帖用の空間で必要だった5000Wのエネルギーで45帖がコントロールできたり、60帖がコントロールできたり、80帖がコントロールできるようになっています。
これが高気密・高断熱の役割とも呼べます。
では高気密高断熱にすれば家じゅうの温度差は少なくなるでしょうか?
ある意味YESですし、ある意味はNOです。
YESの意味は、家の外周部から逃げるエネルギーは何にせよ少なくなっているので、当然昔の家と比べると当たり前ですが、温度差は少なくなります。
ではなぜNOの部分があるのかと言えば、高気密・高断熱は勝手に温度を上げたり・下げたりしてくれる魔法ではなく、必要なエネルギーを少なくしてくれるだけの物でしかないからです。
せっかく6帖用なのか12帖用なのか16帖用なのかは別にして、せっかく大きな空間をコントロールできるようになったのであれば、その空間隅々までエネルギーが届かなければ意味が無いからです。
家はオフィスや店舗のような大空間だけで構成されてるわけではなく、玄関ホール・LDK・廊下・トイレ・洗面室・クローク・脱衣ランドリー・お風呂etcたくさんの空間で構成されています。その空間にエネルギーが届かなければ、当たり前ですが、温度のコントロールは出来ません。
せっかく高気密高断熱にしても、「エネルギーを届ける。」が出来なければ、温度差の少ない暮らしが実現する事が難しくなります。
当たり前の事のように思える「エネルギーを届ける。」
Soraieではエネルギーをどのように届けるのか。使うのかをテーマにしています。
実はこれは難しいものでもあります。
暮らし方や考え方が家族構成やライフスタイルで大きく変わる物だからです。
ではどうやったら「エネルギーを届ける。」ができるのか?
まずひとつは当たり前ですが、「空間をつないで1つにする。」と温度差は少なくなります。簡単に言えば「ドアの開けっ放し」です。こうすることで、リビングに置いたエネルギーは他の空間にどんどん広がっていきます。
昔の住まいはエネルギー的にこんな暮らしに耐えられませんでした。なぜなら14帖のエアコンで14帖をコントロールするのに精いっぱいで、開けっ放しなんてすると、肝心のリビングが寒くて・暑くて仕方なかったからです。
もちろん今でも、匂いや視線・プライバシーの観点から、いつも開けっ放しと言うわけにはいきませんが、エネルギー的には開けっ放しは悪い事ではなく、良い事に変わっているのです。
空間デザイン住宅Soraieでは以前より、「使いやすさ」のテーマでも掲げているのですが、引戸でつないでワンフロアに使える家づくりを目指しています。実はこれが上記の「空間をつないで1つにする。」という意味でもあります。
具体的には部屋を作るのではなく動線を作る。帰宅動線・家事動線・朝の準備動線など動き方を想定して、帰って来て手を洗って・上着やカバンを置いて・ランドリーで着替えてLDKへ。。。など、そんな動き方ができるプランニングを目指しています。そしてそんな動線を行き止りをなるべく作らないように、そして引戸でつないでいきます。
そうする事で、実際に家事をしている時・準備している時は、引戸を開けて開放しておいたほうが使いやすくなります。各部屋を行き来するときは、ドアなんてなくワンフロアのほうが使いやすくなります。
そして本コラムの本題ですが、視線や匂いが気にならないとき、お客様が来ていないときはぜひ引戸を開放して、空間をつないでワンフロアにして、「エネルギーを届ける。」使い方をお勧めしております。
開き戸でも同じように思えますが、開き戸は基本的に締めるドアだと考えています。やはり開いた先の邪魔になりますし、有効開口幅から考えても動線上は引戸がお勧めです。
今のお住まいはエアコンなどのエネルギー源があるLDKなどのお部屋から、開放さえできていれば、かなり温度は少なくなっていきます。
エネルギーを届ける。は簡単そうにも思えます。
ですが、実際の生活を想像してみると、いつもどんな部屋も開放する事ができるでしょうか?
寝室や子供部屋などの個室。トイレ。
玄関からいきなり奥が見えるのは嫌だと思われる方もいらしゃるでしょうし、年頃のお子様の個室や寝室などやはりプライバシーの観点から開けっ放しは出来ない。とお考えの方もいらっしゃると思います。なので・・・実はエアコンの使い方・エネルギーの届け方はとても難しいのです。
どこは開放できる?どこは閉める?では閉めた時エネルギーはどうするの?こんな事を考えるのは大変ですが、こんな事を少し考慮するだけで、快適さは大きく変わってくると思います。
閉めた時のエネルギーの届け方。ひとつの参考に、空間デザイン住宅Soraieでは、
現在公開しております、「岡山市南区浦安本町コンセプトハウス」におきまして、三菱電機のエアパス用ファンを導入して、閉めた状態でもエネルギーが届きやすい空間づくりを目指してみました。TVの上に見えるのがそのファンです。換気扇と言えば、外へ匂いや煙、Co2などを排出するものが一般的ですが、これは室内から室内へエネルギーを送るための送風扇です。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/products/ventilationfan/pipefan/advantage_07.html
エネルギーで満ちるLDKのエネルギーを、引戸を閉めていても玄関ホールをエネルギーを届ける事を目指しています。
上記のとおり方法は何でも良いのですが、「エネルギーを届ける。」事ができれば、今の住まいは本当に温度差が少なく出来ますので、ぜひ上記も参考に、ライフスタイルに合わせた「エネルギーを届ける。」を探してみてください。
この冬Soraieでは、「岡山市南区浦安本町コンセプトハウス」に24時間温度測定・記録が可能な温度計を、各所に置きまして、
「引戸を開放して空間をつないだ場合」
「引戸を締めて、各空間を独立させた場合」
「引戸を締めて、各空間を独立させて、エアパスでエネルギーを送った場合」
で状態を変えながら検証してみました。
次コラムでは、どのように温度差ができたのか。エアパスの効果など検証しますので、ご興味いただけましたら、次コラムもぜひご覧下さい。
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