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Soraie一級建築士コラム

06
Soraieの高性能住宅

少ないエネルギーで温度差の少ない暮らしを。③「エネルギーの届けかた」

2024.06.10

温度差の少ない住まいづくり。高気密高断熱はあくまでもその手段です。エネルギーが届かなければその効果も半減してしまいます。Ua値0.41C値0.2のこの建物も、帰宅動線・家事動線を引戸でつなぐワンフロア設計と、オープンに出来ないときのためにエアパスファン補助で導入しています。岡山市南区浦安で見学会開催中。ぜひ体感ください

Soraieの目指す家づくり 
少ないエネルギーで温度差の少ない暮らしを

「エネルギーの届けかた」

この冬の間Soraieではエネルギーを届ける大切さの検証を浦安本町コンセプトハウスで行っていました。

「高気密・高断熱にさえしたら温度差の少ない暮らしは出来るの?」

「どうやったら、エネルギーが届いて温度差の少ない空間に出来るの?」

 

具体的にはエアコンの運転(24℃暖房設定)は同じ状態にして、

①引戸をフルオープンにして、物理的に空間をワンフロアに繋いだ状態

②引戸を閉めて各空間を仕切った場合

③引戸は閉めるけどエアパスファンを用いてエネルギーを送った場合

で各空間の温度を測定いたしました。

トイレは開けっ放しになかなかしないので、閉めた状態にしています。

 

①引戸をフルオープンにして、物理的に空間をワンフロアに繋いだ状態

 

下記の温度測定データの赤ラインで囲んだ部分がその結果となります。

オレンジ色のハイライトの部分です。

ご覧のようにリビングはもちろん、玄関ホール・脱衣ランドリーに至るまで温度差は1℃以内に収まっています。外部が氷点下になろうとも、エアコンのエネルギー自体は1Fワンフロア全体をコントロールするに十分なエネルギーなので、引戸が開放されて空間が繋がってさえいれば、温度差を少なくする事が出来ています。

 

ただ隣り合う空間の玄関ホールが23℃あっても、開き戸一つ隔てたトイレの中は21℃前後になっています。(これだけ見てもドア一つあるだけで温度が伝わりにくい事が解ります。)

 

このデータが示す通り、ドアをフルオープンにさえできるのであれば、温度差は限りなく小さくすることが出来ています。

Soraieでは、このフルオープンがしやすい間取りを目指しています。具体的には、帰宅動線・洗濯動線・準備動線など・・・なるべく動線を行き止りなく作り、引戸で仕切って構成しています。

こうすることで、温度差の少ない空間を目指しています。

 

意外と簡単でしょうか?

ではこれで全て解決・・・かと言えばそうではありません。

視線や匂いの事、プライバシーの問題。あとは今まで育ってきた環境から・・・玄関ホールから見えっ放しが習慣的に難しい等、フルオープンに、開けっ放しにが難しい場合や難しいお部屋もたくさんあると思います。

そんな時はどうするの?

要はライフスタイルもあるので、このエネルギーを届けるは難しいのだと思います。

 

②引戸を閉めて各空間を仕切った場合

やはり閉め切ってしまうと、いくら高気密・高断熱にしようとエアコンのあるリビングとその他お部屋の温度が大きくなってしまいます

リビングと隣り合う玄関ホールがすでに19℃台まで低下し、そこから更にドアを隔てたトイレは17℃くらいまで温度が低下してしまっています。もちろん昔のお家のように寒くて震えるような事はないですが、肌寒い環境にはやはりなってしまいます。

 

では各空間を閉めてもエネルギーを届けるにはどうしたら?

 

エネルギーを届ける一つの方法は「ダクトを使ったセントラルエアコン」です。これで壁があろうと、ドアがあろうと、ダクトを通してエネルギーが送れるので、各空間の温度差をかなり小さくすることが可能です。

一種熱交換器と組み合わせた、換気空調システムもあります。

この方法はもちろん、エネルギーを届ける理にかなった方法です。

ただ、Soraieでは送風側(給気側)にダクトが無い方が良いと考えているのが1点と、電気機器は故障や交換がつきもので、高額なシステムを導入するとずっとコストが付きまとうという点が1点。この理由で換気空調をセットにするような仕組みは採用しておりません。

そこで、もう少し簡易にエネルギーを届ける方法として、室内用換気扇三菱空調のエアパスファンを試験的に導入しております

https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/products/ventilationfan/pipefan/advantage_07.html

上記の通り、換気扇といっても空気の入れ替えを目的にしたものではなく、エネルギーの伝達。いわば部屋を超えるサーキュレーターのような役割を目指したものです。

三菱電機の実験でも壁ひとつドアひとつで仕切られるだけでなかなかエネルギーは届かなくなります。

このエアパスファンを回すと、まったく同じではないですが、かなり近い温度にすることが出来ています。この実験はエネルギーを届ける難しさと同時に、エネルギーが届けば同じ温度に出来る事を実証しています。

温度差の少ない空間の為に高気密高断熱はひとつの要素です

Soraieでも浦安本町コンセプトハウスに、このエアパスファンを導入してみました。C値が0.2の気密住宅でもありますし、そのまま1台エアパスファンを回すと、エネルギーはともかく、正圧・負圧が各エリアで大きくなりすぎて、換気が上手く働かなくなる事が想定されるので、スイッチ一つでリビング(エネルギー源)から出る方向に1台、リビング(エネルギー源)に戻る方向に1台が同時に回るようにして、各エリアを吸気口を設けてエリアごとに圧力差が生まれないようにしてみました。

 

③引戸は閉めるけどエアパスファンを用いてエネルギーを送った場合

エアパスファンを回す事で、引戸を閉めても、玄関ホールの温度はリビングより1℃低い程度に温度差を少なくすることが出来ています。そちらの温度が高くキープされることで、その先のトイレも20℃を下回らない程度には温度をキープ出来ています。

ただ、その先に吸気口を通じて循環させているはずの脱衣室はやはり温度差が少し生まれるので、エアパス程度の換気量があっても温度の移動はかなり難しいものなのだと思います。

よく換気があるので、温度を一定にできないか?ともご質問頂くのですが、24時間換気程度の風量(エアパスの半分以下)では温度エネルギーがほとんど動かせないのだと思います。

 

 

エアパスファンもなかなか完璧にとは難しかったですが、エネルギーを届けるひとつの方法だと思いますし、イニシャルコスト・ランニングコスト・メンテナンスコストを考えても非常に安価にできる方法だと思いますので、ぜひご参照下さればと思います。

 

 

次は冬の最後の実験に、ワンフロアに開放&エアパスを組み合わせてみました。エアパスファンで届けるところは届ける。ワンフロアに開放して届けるところは届ける。

を温度計で測定する箇所を変えながら実験しています。

 

 

 

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