耐震性、気密性、断熱性、耐久性に優れた住宅を、高性能住宅と呼びます。相応のコストはかかるものの、耐久力がある快適な住環境を手に入れられることから、近年人気の住宅です。
この記事では、高性能住宅が誇る4つのポイントと、高性能住宅に住むメリットを解説します。
記事の後半では、高性能住宅を住む際に注意したい3つのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
「高性能住宅」と呼ばれる4つのポイント
高性能住宅が何をもって「高性能」と評価されているかというと、主に
・耐震性
・気密性
・断熱性
・耐久性
の4つが挙げられます。
「高性能住宅」を名乗る際に明確な基準値はありませんが、上記4点が向上する仕組み・工夫を搭載している住宅のこと、と考えるとよいでしょう。
では、耐震性・気密性・断熱性・耐久性は、それぞれ具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
耐震性の高さ
日本は地震大国とも呼ばれる、非常に地震の多い国です。阪神淡路大震災、東日本大震災といった大規模な被害をもたらした地震は記憶に新しいでしょう。
高性能住宅は、地震の揺れから自分や家族の命、家具、財産を守るための耐震性に優れています。
耐震性能は2000年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で定められた耐震等級という指標で比較できます。
耐震等級 | 特徴 |
耐震等級1
|
建築基準法の基準(震度5程度の地震で損傷せず、震度6強~7程度の地震で倒壊・崩壊しないレベル)を満たす |
耐震等級2 | 建築基準法の1.25倍の耐震性能を誇る |
耐震等級3 | 建築基準法の1.5倍の耐震性能を誇る |
気密性の高さ
気密性とは、家がどれだけ密閉されて空気の出入りを生じる隙間を減らせるかを表す指標です。気密性が高いと省エネルギー化、外気温の影響減少、換気効率の上昇といったメリットを得られます。
家に隙間があると、せっかくエアコンで調節した室内の空気が外の空気と入れ替わってしまうため、空調の効きが悪くなります。
かつての日本家屋は風通しのよさを重視していたので、気密性は考慮されていませんでした。しかしエアコンの普及や夏場に猛暑日が増えてきたなどの変化にともない、気密性の重要性は高くなっています。
断熱性の高さ
断熱性とは、外気を遮断する能力のことです。床や壁に埋め込む断熱材によって、室内外の熱の移動を抑えます。
夏場の暑い空気、冬場の寒い空気は、窓や壁を伝って部屋に流れ込んでくるため、断熱性にこだわることで、それらの熱の移動をシャットアウトできます。
上述の気密性と合わせて、1年中過ごしやすい快適な環境を作るために必須の要素です。
耐久性の高さ
耐久性は「長期優良住宅」と同義として考えるとよいでしょう。
高性能住宅は、一生を過ごす家に、長く住んでも変わらない質と安心感をもたらします。また、耐久性が高く、劣化しづらい、省エネ性能が高い、耐震性が高い、長期的に安心して住めるといった項目を満たす家は、長期優良住宅に認定を受けられ、税金面で優遇される点もメリットです。
高性能住宅に住む4つのメリット
高性能住宅に住むメリットとしては、下記の4つが挙げられます。
・環境に優しい
・ヒートショックのリスクを減らせる
・光熱費の節約
・防音効果
環境に優しい
高性能住宅はソーラーパネルを設置して、サイクルエネルギーを利用した環境に優しい発電ができます。気密性と断熱性に優れているため、エアコンの効きがよく、省エネにもつながります。
また、耐久性に優れ長く住み続けられることから、家屋の取り壊しを行う頻度が減り、必要最低限の建材で済む点も環境に優しいポイントです。
ヒートショックのリスクを減らせる
高齢の親を持つ場合や、自分が歳を重ねた時のために、ヒートショックのリスク軽減は重要です。
ヒートショックとは、浴室で発生することの多い疾患です。温度差による急激な血圧の上下によって引き起こされます。冬場は暖房の効いた部屋と、その他の部屋を出入りする際に温度差がとくに激しく、ヒートショックの発生率が高まります。
ヒートショックは脳梗塞、心筋梗塞の原因となり、最悪の場合、命に関わる危険な疾患です。気密性と断熱性に優れた高性能住宅は、家全体が部屋による温度差が少ないため、ヒートショックの発生リスクを減らせます。
光熱費の節約
高性能住宅は、気密性と断熱性に優れており、エアコンの効きがよい点がメリットの一つです。外気温の影響を受けにくいため、エアコンで調整した室温を保ちやすく、光熱費を節約できます。
気温によっては、冷暖房を付けなくても過ごしやすい場合があるため、高額なコストをかける確かなリターンがあります。
また、太陽光発電のためのソーラーパネルを設置すると、電力を生み出して光熱費が黒字になる場合もあるため、ぜひ検討してみましょう。
防音効果
高性能住宅は密閉性が高く、室内外を問わず防音性が高い点もメリットです。外の騒音を防ぐだけでなく、自分の家からの騒音が周辺に漏れてしまうのを防げます。
高性能住宅に住む際に注意したい3つのポイント
ここでは高性能住宅に住む際に注意したい3つのポイントを解説します
建築コスト
高性能住宅は、耐震性・気密性・断熱性・耐久性を高くする分、相応の金額と施工時間を要します。予算内に収めるには、部屋の間取りや窓の配置、建材、断熱材といった折り合いをつけなければなりません。
しかし初期費用を多く用意することで長く高性能な住宅に住めるため、将来的にはお得になります。
高断熱には注意
気密性と断熱性に優れている高性能住宅は、冬の寒さに関して一定の効果がありますが、夏場は逆に熱が逃げず暑くなってしまいます。
したがって「エアコンを活用する」「換気を行う」「カーテンを利用して直射日光を避ける」といった3点を意識して過ごすのがおすすめです。
高性能住宅はエアコンの効きがよいので、夏場はエアコンを活用して室温調整を行いましょう。また、換気の効率がよいため、暖気を押し出して新鮮な空気を取り込めます。カーテンによって日光を遮り、部屋の中の空気を暖めないようにするのも重要です。
シックハウス症候群に注意
シックハウス症候群とは、建材から発生する化学物質が原因で頭痛や鼻水、喉の痛みといった症状を引き起こす疾患です。
気密性が高い高性能住宅では、化学物質が部屋に溜まることでシックハウス症候群の発症リスクを高めます。しかし高性能住宅は換気効率が良く、定期的な換気で症状となる化学物質を外に押し出せます。日頃から換気を意識しましょう。
まとめ
高性能住宅は、耐震性、気密性、断熱性、耐久性に優れた住宅のことを指します。コストがかかる分リターンも多く、年中安定した室温で過ごせるほか、耐久性が高く長期的に使用できます。さらに省エネルギー化に秀でており、光熱費が安く済むといった点も大きなメリットです。
高性能住宅に住む際は建築コストの高さや、夏場は熱がこもりやすく、シックハウス症候群の発症リスクといった注意点もあります。しかし長期的な目線で見れば光熱費を節約でき、定期的な換気を行えば夏の暑さやシックハウス症候群のリスクを軽減できます。
メリットとリスクをしっかり理解してから、高性能住宅を検討してみましょう。